どんな仕事をしていますか?

船についている観測機器のお世話、そして研究者さんと乗組員さんの仲介役が私の仕事です。 研究者さんから観測についてご要望をいただいたときに、船に載っている装置のスペックを最大限に活かしつつ、安全に航海を進めるには、どのように調査を進めるのがベストかをご提案させていただくんです。 調査船のプロとして、観測を成功に導くために、自分たちが管理する装置については誰よりも詳しくいないといけない、と思っています。

入社したきっかけは?

大学院では気象気候の研究をしていました。 観測のために船に乗って雨雲や雪雲に突っ込んでいく日々を過ごしていたのですが、船の上で地球の息遣いを感じられる毎日がとても幸せで。 ここでずっと研究に関わっていたい、と思っていたら、まさにそれができるこの会社に出会ったんです! 気象気候の研究をしていたものの、私は地球のすべてが大好き。 海や空だけでなく、地震や深海の調査もできると知り、ここしかない!と思いました。 研究室で気象気候に向き合うのも楽しいけど、ここで働けば、もっと広い世界が見られる。 その確信が私をここに導いてくれました。

やりがいってどんなところ?

研究者さんの一番の理解者として、最前線での調査をリードできることです。 学生時代、調査の間に装置が壊れてしまい、データが一切取れずにとても歯がゆい思いをしたことがありました。 自然現象に立ち会えるのはいつだってその1度きり。 研究者は皆、1度の航海にたくさんの時間と想いをかけているんです。 その気持ちを知っているからこそ、船の観測スペックを熟知した立場で、自分の持ちうる知識や経験をフルに使い、調査を成功に導いていくこの仕事に大きなやりがいを感じています。

いちばん印象に残っている仕事は?

どのお仕事も新鮮で楽しくて、1番を決めるのは難しいですね。 ひとつ、最近感動したことをお話ししてもいいですか? 観測装置の中に、マルチビーム測深機という海底の地形を測る装置と、ドップラーレーダーという雨雲を観測するための装置があります。 見た目も用途も似ても似つかないように思える2つでしたが、ある日観測原理が似ていることに気づいたんです。 海と空を観測する装置の共通点に、なんだかニヤリとしてしまいました。

休日は何している?

大学院で博士後期課程に進み、北海道西岸沖に発生する「忍者低気圧」についての研究をしています。 発生が突発的で、天気図に表れないほどサイズも小さく、どこで大雪が降るか予測がつきづらいから「忍者」。 その忍者を世界で初めて、海上で直接観測することに成功した私たちは、海からのエネルギー供給を定量的に明らかにし、周辺の海面水温の勾配が低気圧の維持、発達に影響を与える可能性を見出しました。 また北海道西岸沖が忍者の里である理由についてもグローバルな視点から迫っています。 現在はさらにもう一歩踏み込んで、忍者低気圧自体が、海流の向きを変えて、自分自身をさらに強めるシステムを持っているんじゃないかという説を実証しようと奮闘中です。

子どもの時に探求していたものは?

船と工作が好きで、将来は船大工になりたいと思っていました。 地元に造船所があったので、船が身近な存在だったこともあって。 船に乗って揺れていると海を感じられるのが好きなんです。 今も船が大好きで、北海道まであえて船で行ったりしています。 普段の仕事も、装置のためのコネクタを作ったり、はんだを使ったりと自分たちで作れるものはどんどん手作りする文化で、工作に打ち込んでいるのも変わらないですね。

これからどんな探求がしたい?

ものすごく大きな野望ですが、地球科学の前進に貢献したいです! 将来の気候を予測するにはまず、現在の気候システムがどのように形成されているのかを知る必要があります。 ですが、地球の歴史や海洋大循環などのもつ時間スケールに対して、これまで人間が観測してきた期間はすごく短くて。 海上のデータは特に貴重なので、いろんな海に行って観測の回数を積み上げていくこと自体に大きな意味があると思っています。 観測を行うにあたって、研究者の方だけで船を用意するのは不可能。 だからこそ、観測装置や船についての知識やスキルをもっともっと身につけて、1つでも多く調査を積み上げられるようになりたいです。 こうしてお話ししている間にも、貴重なデータが失われているかもしれない。 そう思うと全然ゆっくりしていられません!

隙間時間を活用して
研究を重ねています

PROFILEプロフィール

山中 晴名Haruna Yamanaka

海洋調査部
2023年入社

2023年、観測技術員として入社。 「みらい」の船体固定観測装置の運用・保守を担当し、水中探査機による深海調査航海において研究者支援にも従事する。 観測技術員の仕事のかたわら、社会人ドクターとして大学にも在籍中。 海上での直接観測から忍者低気圧の発達機構を探っている。