#1協力の背景

もともとNMEの中で水中機器事業部は、ROV(遠隔操作型無人探査機)のパイロットでの経験や、メンテナスに関してのノウハウを海洋調査以外で役立てられないか、多方面の企業に需要を模索していました。 その中で最初に当部のパイロット人材派遣が始まったのが、水中土木工事の現場。 最も早い企業様とのお付き合いは2011年ごろに始まり、その後毎年、ROVパイロットの人材を派遣してきました。

洋上風力とのかかわりも水中土木工事との関係から発生します。 特に2018年頃から、取引先企業が洋上風力やそれに関連するケーブル敷設工事を実施するに伴い、ROV24時間オペレーションを担えるパイロット人材の派遣需要が増加します。 それが発端となり、当部のパイロット人材もまた洋上風力発電関連工事の現場に赴くようになったのです。

#2NMEにかかる期待

NMEのROVパイロットが取引先から期待される理由。 それは水中土木工事(海底ケーブル工事等を含む)を行うROVが持つ固有の事情に基づきます。

水中土木工事用のROVは大型で、その役割は人に代わって目の代わりをしたり、重作業を行ったり多種多様です。 また、洋上風力発電工事は潮流の影響を受けやすい比較的浅瀬(30m〜100m)で行うこともあります。 こうした工事での最大の懸念は「ROVの故障」であり、それをもってしても時間内でどれだけ的確に作業を実施できるかが良し悪しの基準になります。 パイロットの能力はもちろんのことですが、水中機器で絶対に故障しない機器はないことから、メンテナンス(修理・整備)と操縦の二つの技術を高く併せ持つ人材を要望されます。

山内: 「誰でもハンドルを握れば思い通りに動いてくれる水中機器(ROV含む)なら、私たちは必要とされないかもしれません。 NMEでは30年以上ROVを取り扱い、不具合時には船上で修理しながら、復活させて水に潜らせ稼働させてきました。 そうした経験が評価されたのだと思います。 大切なのは、たとえ古くなった機械といえ、経験上でメンテナンスし使用できるのであればその場で修理することでダウンタイムを最小化し、稼働率を上げること。 トラブルに直面しても工事を敢行して継続し、目的(完工)にたどり着くために私たちが頼ってもらえる存在でありたいです」

また、工期の長さも時には問題が生じます。 場合によっては4ヶ月以上続く工事に人材を出し続ける余力があるかどうか。 NMEは、約40名のROVパイロットや水中機器に携わる人材を雇用している会社です。 これだけの数を抱えている企業は、日本国内では珍しく、その人材の数から時には、パイロット要員の交代を入れながらでも途切れずに工事をやり切ってくれるという点で信頼をいただいています。

最初の一社とのお取引以来、現在では複数社に向けて洋上風力用海底ケーブル工事への人材派遣が続いています。

石塚: 「洋上風力はこれから伸びていく市場ですが、今はまだその水中工事に使う船と機械、何より工事に携わる人材が足りていないと言われています。 船と機械が確保できた時に、当社として、どの社員が現場に行っても同じように仕事ができるよう、今はオペレーターの質の底上げにも注力したいと思っています」

#3さらなる展開

今後、洋上風力発電が更なる発展をするかに関し、確実に課題となることの一つが、設置場所の漁業権利です。 漁場となる箇所を避けるのはもちろんのこと、ケーブルが通る場所や陸に引き上げるポイントの岩礁の様子をよく観察し、「ここであれば」と地元住民が納得できる場所を探し出す必要があります。 こうした場面でもNMEは活躍できると考えています。

山内: 「現在、NMEの水中機器事業では、小型ROVの活用を進めています。 それは、海底ケーブルが通る岸までのルートを数千枚、数万枚の静止画に収め、重ね合わせることで、3D映像で海底状況を見せる方法です。 この成果物を使えば、洋上風力発電設置の理解・検討に利用してもらえるのではないかと思っています。 また設置後の定点観測やメンテナンスでも小型ROVで支援していければと考えています」

これから、より多くの現場への人材派遣とともに、ROVや特殊な水中用装置を作る際の開発支援にも乗り出していきたいNME。 水中という別世界をフィールドに活躍する技量を軸に、日本の持続可能な発展に貢献してまいります。

Profileお話を聞いた人

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山内 徳保Noriyasu Yamauchi

水中機器事業部長。 1997年に入社し、「かいこう」のオペレーションおよび機器整備、JAMSTEC所有の各種ROVの運用と後方支援に携わる。 ROVの設計コンサル、開発製作なども経験したのち、2020年より経営に。 洋上風力発電プロジェクトでは、水中機器器事業部の長として、管理、計画など事業管理に就く。

石塚の写真

石塚 哲也Tetsuya Ishizuka

2006年入社(中途)。 「かいめい」水中機器チームに所属し、一等潜技士として現場作業および指揮を担当。 洋上風力発電プロジェクトでは、ROVオペレーターとして作業船に乗船し、海底敷設ケーブルの埋設作業等をおこなっている。