沿革Company History
1980年、日本の海洋調査の希望を背負い
船出をした日本海洋事業。
その軌跡は、未知に挑む科学技術の
進化の歴史であるとともに、
この国の海洋事業を支え、発展させ、
その意義を問い直し続けた人々の歴史でもあります。
NMEの歩み
創業の経緯
当社の歴史は、一つの告示から始まります。 1979年、科学技術庁を所管官庁とする認可法人「海洋科学技術センター」(現JAMSTEC)が、潜水調査船「しんかい2000」の支援母船である「なつしま」運航の外部委託先を公募すると発表。 日本水産はこのチャンスを、漁業で培った自社技術を活かせる場と見なし、横須賀市の市川海事興業とジョイントを組んで公募に名乗りを上げます。
2社が出資して立ち上げた新会社の名こそ、日本海洋事業。 1980年1月31日、私たちの歩みが始まります。
右肩上がりの運航実績(1980年〜)
「なつしま」の運航を受注した日本海洋事業は、初年度を13人で走り始めます。 深海調査という特殊業務に万全を期すため、船長や機関長などの幹部船員にはすべて日本水産の経験豊富なメンバーを派遣。 実績は右肩上がりに伸び、1985年に竣工した海中作業実験船「かいよう」、1990年の「よこすか」と、海洋センターから運航・管理を委託される船は10年で3隻に増えます。 また1990年には世界の海底の98%を調査できる潜航能力を有した有人潜水調査船「しんかい6500」、1994年に日本初の深海無人探査機「ドルフィン3K」の運用・管理業務を開始するなど、水中機器の運用と整備にかかわるスキルも着実に蓄積していきます。
創業年に1億円だった売上高は1994年に39億円に、社員数は13人から178人に。 第一次成長期とも言える90年代半ばまでのこの期間、当社の中心にあったのは「調査船運航事業」「深海事業」「調査観測事業」の三つでした。
躍進と逆風(1995年〜)
「単なる船舶の運航や観測機器の運用会社ではない。 我々は“調査研究支援の総合企業”である」。 その矜持が研究者をはじめとするさまざまな人のニーズに的確に対応する力を育て、次なる成長期を呼び込みます。 1997年、1万m級無人探査機「かいこう」を搭載する母船「かいれい」の運航委託が開始され、4隻体制が整います。 2002年には250人の全社員が正社員となりました。
しかし、2003年、これまで順風満帆に進んできた当社をある事件が襲います。 潜航中の「かいこう」の二次ケーブルが切れ、海中でビークルを亡失してしまうのです。 その代替機の開発を当社の深海技術部が中心となって進めた経験が、後に当社が水中機器の「ものづくり」を事業化する礎となります。 折しも外部環境の変化が押し寄せ、従来の事業だけでは立ちいかなくことが予想されていたこの時期。 若手を中心に「Made in 日本海洋事業」を推進し、機器開発に情熱を注いだことが、その後10年の業容拡大を大きく引き寄せていきます。
フィールドを広げ、さらなる貢献へ(2010年〜)
「しんかい2000」の運用から始まり、「しんかい6500」、そして「かいこう」の開発へ受け継がれた「深海事業」は、「水中機器事業」としてその後海底ケーブルの埋設用ROVや、海底地形を無人で探査するAUVの開発などへと展開します。 さらに、「調査観測事業」では、小型の海底地震計の深海の圧力に耐えて稼働する技術が、南極の氷の下でその重みに耐えながら稼働する技術に応用できたことから、千葉大学と共同での南極におけるニュートリノ観測装置開発にも結実。 2015年からは海洋地球研究船「みらい」の運航にかかわるGODI社との経営提携も始まり、船員・観測技術員・陸上支援員のノウハウがさらに強化されることとなりました。 こうして今や、当社の事業は「調査船運航」「調査観測」「水中機器」の三本柱と言えるまでに成長してきたのです。
現在、当社は海洋教育にも力を入れており、大学への技術者の派遣、都立高校の実習船「大島丸」の運航委託など、特に2016年以降は次世代を担う海洋人材の育成に本格参入しています。
日本の海洋事業を支え、地球と人とのより良い発展に導いてゆく。 長らく深海調査の最前線で育んできた探究心に曳航されながら、日本海洋事業はこれからもいっそう力強くその使命を果たしてまいります。
沿革一覧
1980年1月 | 海洋科学技術センター(現 国立研究開発法人海洋研究開発機構。 以下、JAMSTEC)が所有する深海潜水調査船「しんかい2000」の支援母船 「なつしま」の運航・管理を行うため、日本水産株式会社の子会社として設立。 |
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1981年10月 | 「なつしま」JAMSTEC引き渡しの後、就航以来運航・管理業務を受託。 (2016年2月終了) |
1985年5月 | 海中作業実験船「かいよう」が竣工。 その運航・管理業務を受託。 (2016年2月終了) |
1990年4月 | 「しんかい6500」の支援母船「よこすか」が竣工し、その運航・管理業務を受託。 |
1993年4月 | 株式会社海洋バイオテクノロジー研究所より「蒼玄丸」の運航・管理業務を受託。 (1996年3月終了) |
1993年9月 | 「しんかい2000」の運航・管理業務を受託。 (2002年11月終了) |
1994年4月 | 無人探査機「ドルフィン-3K」の運航・管理業務を受託。 (2002年9月終了) |
1995年5月 | 安全管理システム SMS認証取得。 |
1997年3月 | 深海調査研究船「かいれい」が竣工し、運航・管理業務を受託。 地殻構造探査システムの運用業務受託。 |
1999年5月 | 国際安全管理コード(ISMコード)の認証取得。 |
2000年4月 | 無人探査機「かいこう」ならびに「ハイパードルフィン」の運航・管理業務を受託。 |
2004年4月 | 潜水調査船「しんかい6500」の運航・管理業務を受託。 |
2008年9月 | 海底地震計(OBS)整備業務を受託。 |
2009年4月 | 深海巡航探査機「うらしま」の運用業務を受託。 |
2011年4月 | 学術研究船「淡青丸」の運航・管理業務を受託。 (2013年1月終了) |
2013年6月 | 東北海洋生態系調査研究船「新青丸」の運航管理業務を受託。 |
2014年8月 | 海上労働条約(MLC) 認証取得。 |
2016年3月 | 海底広域研究船「かいめい」の運航管理業務を受託。 |
2016年4月 | 海洋地球研究船「みらい」の運航管理業務を受託。 |
2016年4月 | 株式会社グローバルオーシャンディベロップメントから一部業務を譲渡。 |
2016年4月 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所から気象観測設備運用支援作業業務を受託。 |
2016年6月 | 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構から日本南極地域観測行動における海底下観測支援業務を受託。 |
2019年3月 | 国立大学法人千葉大学ニュートリノ検出器の製造業務を受託。 |
2019年4月 | 東京都立大島海洋国際高等学校実習船「大島丸」の製造監督業務を受託。 |
2019年5月 | 深海底マッピング技術を競う国際コンペティション「Shell Ocean Discovery XPRIZE」の共同チーム「TeamKUROSHIO」に参加し、準優勝を受賞。 |
2020年2月 | 実習船「大島丸」の運航管理業務を受託。 |